1: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:06:55.36 ID:nmbmsLX+0

「あー」言いながら律は頭をボリボリと掻いた。
「まぁ、確かに、な」
唯に同調する。
「やっぱりそう思うよね!あの子って、先輩に対する礼儀がなってないと思う」
梓に対する不満で盛り上がる二人に、澪はオロオロと狼狽する。
二人と、紬の方を、交互に見比べていた。
紬は、困ったような笑みを浮かべるだけで、成り行きに任せているように見える。
「澪ちゃんは、どう思う?」
来た。澪は、思った。
「まぁ、確かに、な」
唯に同調する。
「やっぱりそう思うよね!あの子って、先輩に対する礼儀がなってないと思う」
梓に対する不満で盛り上がる二人に、澪はオロオロと狼狽する。
二人と、紬の方を、交互に見比べていた。
紬は、困ったような笑みを浮かべるだけで、成り行きに任せているように見える。
「澪ちゃんは、どう思う?」
来た。澪は、思った。
4: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:08:31.96 ID:nmbmsLX+0
「えーと……」
どうしよう。何て答えるのが、正解なのだろうか。
唯と律は、じっと、澪の反応を待っている。
「あの、さ」
澪は、ここでいったん、言葉を切った。そして、短く深呼吸して、一気に言う。
「別にいいんじゃないか?そんなに体育会系でもないだろ。うちは」
「澪ちゃん。それ、どういうこと」
唯の表情が、みるみる嫌悪感で歪む。
「えっと」言葉に詰まる。しまった、間違えたか。
助けを求めるように紬の方を見たが、相変わらず困ったような笑みを、浮かべているだけだった。
どうしよう。何て答えるのが、正解なのだろうか。
唯と律は、じっと、澪の反応を待っている。
「あの、さ」
澪は、ここでいったん、言葉を切った。そして、短く深呼吸して、一気に言う。
「別にいいんじゃないか?そんなに体育会系でもないだろ。うちは」
「澪ちゃん。それ、どういうこと」
唯の表情が、みるみる嫌悪感で歪む。
「えっと」言葉に詰まる。しまった、間違えたか。
助けを求めるように紬の方を見たが、相変わらず困ったような笑みを、浮かべているだけだった。
6: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:09:58.61 ID:nmbmsLX+0
「いや、だからさ」
澪は二の句を継ごうとした。しかし、
「もう、いい」唯はそう言うと、ガサガサと、乱暴に荷物をまとめて出て行ってしまった。
「あ、あ」止めようとした澪だったが、何を言っていいのか分からない。
律が「はぁー」と、大仰にため息をついた。
紬は、困ったような笑みを浮かべていた。
澪は二の句を継ごうとした。しかし、
「もう、いい」唯はそう言うと、ガサガサと、乱暴に荷物をまとめて出て行ってしまった。
「あ、あ」止めようとした澪だったが、何を言っていいのか分からない。
律が「はぁー」と、大仰にため息をついた。
紬は、困ったような笑みを浮かべていた。
7: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:10:32.98 ID:nmbmsLX+0
梓が部室に到着すると、ちょうど律が出ていくところだった。
「あれ、律先輩。どうしたんですか?」
「帰るんだよ。今日の部活は中止」
それだけ言うと、梓の横をすり抜けて、階段を降りて行った。
どうしたんだろう。また、澪先輩と喧嘩でもしたのだろうか。
しばらくどうするべきか思案していた梓だったが、とりあえず部室に顔を出すことにした。
どういう状況なのか、聞きたい気持ちもあったからだ。
「すいませーん!遅くなりました。って、あれ。唯先輩もいない」
部室には、困ったような顔を浮かべた、澪と紬だけが残されていた。
「あれ、律先輩。どうしたんですか?」
「帰るんだよ。今日の部活は中止」
それだけ言うと、梓の横をすり抜けて、階段を降りて行った。
どうしたんだろう。また、澪先輩と喧嘩でもしたのだろうか。
しばらくどうするべきか思案していた梓だったが、とりあえず部室に顔を出すことにした。
どういう状況なのか、聞きたい気持ちもあったからだ。
「すいませーん!遅くなりました。って、あれ。唯先輩もいない」
部室には、困ったような顔を浮かべた、澪と紬だけが残されていた。
9: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:11:04.90 ID:nmbmsLX+0
澪は、自室のベットの上で、頭を悩ませていた。
唯には、謝罪のメールはしたけれど。
「はぁー」
わざと、大きな声でため息をついた。
悩み事が、全部ため息に溶けて消えてくれるような気がしたから。
「明日、ちゃんとみんな来てくれるかな……」
ゴロゴロと寝返りを打ちながら、そう考えているうちに、いつの間にか眠っていた。
唯には、謝罪のメールはしたけれど。
「はぁー」
わざと、大きな声でため息をついた。
悩み事が、全部ため息に溶けて消えてくれるような気がしたから。
「明日、ちゃんとみんな来てくれるかな……」
ゴロゴロと寝返りを打ちながら、そう考えているうちに、いつの間にか眠っていた。
12: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:14:21.26 ID:nmbmsLX+0
澪は、何回も深呼吸を繰り返し、そして、
おそるおそる、部室の扉を開けた。
唯がいた時の、謝罪の言葉を色々考えていたのに、部室には誰もいなかった。
なんだか、ほっとしてしまう。
頭の中で繰り返しシミュレートはしたけど、いざ唯を目の前にすると、
ちゃんと言えるのか、不安だったからだ。
ふぅ、と息をつき、部室に入ろうとした、そのときだった。
「澪ちゃん!」
後ろから、声をかけられた。ギクリとして固まり、一瞬間ののち、振り返る。
おそるおそる、部室の扉を開けた。
唯がいた時の、謝罪の言葉を色々考えていたのに、部室には誰もいなかった。
なんだか、ほっとしてしまう。
頭の中で繰り返しシミュレートはしたけど、いざ唯を目の前にすると、
ちゃんと言えるのか、不安だったからだ。
ふぅ、と息をつき、部室に入ろうとした、そのときだった。
「澪ちゃん!」
後ろから、声をかけられた。ギクリとして固まり、一瞬間ののち、振り返る。
13: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:14:53.38 ID:nmbmsLX+0
「唯……、あのさ」澪は、謝罪の言葉を口にしようとした。
「昨日はごめんね!澪ちゃん!」言い終わる前に、抱きしめられた。
「澪ちゃんは何も悪くないよ!私がわがままなんだよ!」
ぎゅうぎゅうと、体を締め付けてくる。
ああ、良かった。いつもの唯だ。
澪も、抱きしめ返しながら言う。
「私もごめん。唯の気持ちを、考えてやれなかった」
「ううん!いいのいいの!じゃあ今日も楽しく部活やろうね!」
不安材料がひとつ減ったおかげで、体が軽くなる感じがした。
「昨日はごめんね!澪ちゃん!」言い終わる前に、抱きしめられた。
「澪ちゃんは何も悪くないよ!私がわがままなんだよ!」
ぎゅうぎゅうと、体を締め付けてくる。
ああ、良かった。いつもの唯だ。
澪も、抱きしめ返しながら言う。
「私もごめん。唯の気持ちを、考えてやれなかった」
「ううん!いいのいいの!じゃあ今日も楽しく部活やろうね!」
不安材料がひとつ減ったおかげで、体が軽くなる感じがした。
15: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:15:26.21 ID:nmbmsLX+0
唯と律が、ケーキを取り合って、キャーキャーと騒いでいる。
ふと、紬の方を見ると、目があった。
笑顔を浮かべたので、こちらも笑顔で返す。
昨日は、とても不安だったけれど、こうなってみると、その不安も嘘みたいだった。
けいおん部の部室は、やっぱりこうじゃないとな。
澪は、そう思いながら、紅茶に手を伸ばす。そのとき。
扉が、バン!という、大きな音をたてて開いた。
「すいません!遅くなりました!」
澪は見た。唯の顔から、表情が、消えるのを。
ふと、紬の方を見ると、目があった。
笑顔を浮かべたので、こちらも笑顔で返す。
昨日は、とても不安だったけれど、こうなってみると、その不安も嘘みたいだった。
けいおん部の部室は、やっぱりこうじゃないとな。
澪は、そう思いながら、紅茶に手を伸ばす。そのとき。
扉が、バン!という、大きな音をたてて開いた。
「すいません!遅くなりました!」
澪は見た。唯の顔から、表情が、消えるのを。
16: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:18:37.31 ID:nmbmsLX+0
「すいません、H.R.が長引いて……」
バタバタと駆けてくる梓の前に、唯が立ちふさがった。
「あ、」すいません唯先輩。と、言いかけたが、唯の平手打ちがそれを許さなかった。
バシン!という大きな音が、完全防音の部室に響き渡る。
「あ、え?」梓は一瞬訳が分からないという表情になった。
「な、何するんですか!唯先輩!」
二度目の、バシン!という音が、響き渡った。
バタバタと駆けてくる梓の前に、唯が立ちふさがった。
「あ、」すいません唯先輩。と、言いかけたが、唯の平手打ちがそれを許さなかった。
バシン!という大きな音が、完全防音の部室に響き渡る。
「あ、え?」梓は一瞬訳が分からないという表情になった。
「な、何するんですか!唯先輩!」
二度目の、バシン!という音が、響き渡った。
17: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:19:08.62 ID:nmbmsLX+0
「梓。最近、調子乗ってるよね」
”梓”
自分のことを呼ばれているのに、違和感を覚えた。
「あずにゃーん!」って、呼んでくれる、いつもの唯先輩はどこに行っちゃったんだろう。
「ねぇ?」黙っている梓にしびれを切らし、唯が返答を促す。
「あの、えっと!はい!」混乱した頭で返答する。
「調子に乗ってるでしょ」無表情のまま繰り返した。
「い、いえ!そんなことはないです!」
唯は、つまらなさそうに「ふーん」とだけ言った。
”梓”
自分のことを呼ばれているのに、違和感を覚えた。
「あずにゃーん!」って、呼んでくれる、いつもの唯先輩はどこに行っちゃったんだろう。
「ねぇ?」黙っている梓にしびれを切らし、唯が返答を促す。
「あの、えっと!はい!」混乱した頭で返答する。
「調子に乗ってるでしょ」無表情のまま繰り返した。
「い、いえ!そんなことはないです!」
唯は、つまらなさそうに「ふーん」とだけ言った。
18: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:20:56.73 ID:nmbmsLX+0
唯と律は、相変わらずふざけあって騒いでいるけど。
さっきまでとは、全然空気が違っていた。
先程から、梓は青ざめた顔で、ずっと俯いている。
紬は、それを心配そうに見つめていた。
澪もどうしていいか分からず、ただ黙っているだけだった。
「あーあ」
唯が突然、大きな声で言った。
「誰かさんのせいで、部室が辛気臭いよー」
梓の体が、ビクリ。と、はねた。
さっきまでとは、全然空気が違っていた。
先程から、梓は青ざめた顔で、ずっと俯いている。
紬は、それを心配そうに見つめていた。
澪もどうしていいか分からず、ただ黙っているだけだった。
「あーあ」
唯が突然、大きな声で言った。
「誰かさんのせいで、部室が辛気臭いよー」
梓の体が、ビクリ。と、はねた。
20: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:21:45.89 ID:nmbmsLX+0
「あはははー。自覚はあるみたいだねー」
唯と律が、きゃっきゃと笑っている。
膝の上に手を置いて、しばらく震えながら耐えていた梓だったが、
とうとう堪え切れなくなったのか、荷物を乱暴に引っ掴んで部室を出て行った。
澪には、梓が涙を流しているように見えた。
「あー、これで空気も良くなるねー!」
その後ろ姿に、容赦なく追い打ちをかける。
さすがに、咎めるべきだろうか。
澪は思ったけれど、昨日のことが思い返されて、それができずにいた。
梓には申し訳ないけど、もう、あんな気持ちはコリゴリだ。
澪は、無意識に、唯と梓を天秤にかけていた。
唯と律が、きゃっきゃと笑っている。
膝の上に手を置いて、しばらく震えながら耐えていた梓だったが、
とうとう堪え切れなくなったのか、荷物を乱暴に引っ掴んで部室を出て行った。
澪には、梓が涙を流しているように見えた。
「あー、これで空気も良くなるねー!」
その後ろ姿に、容赦なく追い打ちをかける。
さすがに、咎めるべきだろうか。
澪は思ったけれど、昨日のことが思い返されて、それができずにいた。
梓には申し訳ないけど、もう、あんな気持ちはコリゴリだ。
澪は、無意識に、唯と梓を天秤にかけていた。
23: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:26:36.17 ID:nmbmsLX+0
いったい、何がどうしてしまったんだろう。
授業も上の空で、梓は自問を繰り返していた。
調子に乗っていたつもりはない。けれど。
少し、失礼な態度を、取りすぎたのかな。
考えていると、また涙があふれてきそうになる。
ちょっと前まではとても楽しい空間だったのに。
今では、あの部室に行くのが、怖い。
今日も、放課後は、まっすぐ家に帰ることにしよう。
それだけ決めると、少し心が軽くなった。
授業も上の空で、梓は自問を繰り返していた。
調子に乗っていたつもりはない。けれど。
少し、失礼な態度を、取りすぎたのかな。
考えていると、また涙があふれてきそうになる。
ちょっと前まではとても楽しい空間だったのに。
今では、あの部室に行くのが、怖い。
今日も、放課後は、まっすぐ家に帰ることにしよう。
それだけ決めると、少し心が軽くなった。
24: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:27:09.69 ID:nmbmsLX+0
梓が来なくなって2週間が経とうとしていた。
唯と律は、相変わらず、今年の夏は海に行こうかー、なんて盛り上がっている。
このまま夏休みに入ってしまうと、梓と仲直りするきっかけが、
永久に失われてしまうのではないかと、とても不安になる。
「ちょっと、二人とも、いいかな」
澪は意を決した。
「なぁに?澪ちゃん」唯は、笑顔のまま向き直る。
「なんだよ?澪」律は少し、怪訝な表情を浮かべた。
「あの、梓のことなんだけど」
唯と律は、相変わらず、今年の夏は海に行こうかー、なんて盛り上がっている。
このまま夏休みに入ってしまうと、梓と仲直りするきっかけが、
永久に失われてしまうのではないかと、とても不安になる。
「ちょっと、二人とも、いいかな」
澪は意を決した。
「なぁに?澪ちゃん」唯は、笑顔のまま向き直る。
「なんだよ?澪」律は少し、怪訝な表情を浮かべた。
「あの、梓のことなんだけど」
27: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:30:08.06 ID:nmbmsLX+0
スッ、と唯の表情が消える。
それだけで、澪は気勢をそがれた。
また、唯に帰られでもしたら、困る。
「あはは、ごめん。なんでも、ないよ」
取り繕うように、澪が言うと、
色のない声で「そっかー」と唯は返した。
「こ、今年、私も海に行きたいな。また、ムギの別荘でさ」
ちらりと、紬の方を見ると、困ったような表情を浮かべていた。
「あー!いいねいいね!じゃあ決まりね!いつにするー?」
笑顔の唯に戻った。
ごめん、梓。私には、無理そうだ。
おそらく、ここに梓は戻ってこれないんだろうなと、澪は考えていた。
それだけで、澪は気勢をそがれた。
また、唯に帰られでもしたら、困る。
「あはは、ごめん。なんでも、ないよ」
取り繕うように、澪が言うと、
色のない声で「そっかー」と唯は返した。
「こ、今年、私も海に行きたいな。また、ムギの別荘でさ」
ちらりと、紬の方を見ると、困ったような表情を浮かべていた。
「あー!いいねいいね!じゃあ決まりね!いつにするー?」
笑顔の唯に戻った。
ごめん、梓。私には、無理そうだ。
おそらく、ここに梓は戻ってこれないんだろうなと、澪は考えていた。
28: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:30:39.94 ID:nmbmsLX+0
昼休みに、廊下を歩いていた梓は、ギクリ、と立ち止った。
廊下の向こうから、唯先輩が、歩いてくるのが、見える。
「あ、ああ……」
恐怖に体がすくんだ。
幸い、向こうはまだ自分に気づいていない。
早く、この場を、離れないと。
そう思う気持ちとは裏腹に、体は全く言うことを聞いてくれなかった。
唯先輩が、どんどん、近づいて、来る。
「あ」目が、合った。
「梓じゃん」
唯が口元を歪めた。
廊下の向こうから、唯先輩が、歩いてくるのが、見える。
「あ、ああ……」
恐怖に体がすくんだ。
幸い、向こうはまだ自分に気づいていない。
早く、この場を、離れないと。
そう思う気持ちとは裏腹に、体は全く言うことを聞いてくれなかった。
唯先輩が、どんどん、近づいて、来る。
「あ」目が、合った。
「梓じゃん」
唯が口元を歪めた。
31: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:36:23.45 ID:nmbmsLX+0
「ど、どうも、お疲れ様です」
梓は、これだけ言うのも精いっぱいだった。
「ん?」唯が、顔を、近づけてくる。
「ヒッ」と、短い悲鳴を上げて、梓は後ずさった。
唯が不快そうに顔を歪める。
どうやら、気分を害したようだ。
「まぁ、立ち話もなんだからさ。部室においでよ」
梓は、気を失いそうになりながらも、唯についていくことしかできなかった。
梓は、これだけ言うのも精いっぱいだった。
「ん?」唯が、顔を、近づけてくる。
「ヒッ」と、短い悲鳴を上げて、梓は後ずさった。
唯が不快そうに顔を歪める。
どうやら、気分を害したようだ。
「まぁ、立ち話もなんだからさ。部室においでよ」
梓は、気を失いそうになりながらも、唯についていくことしかできなかった。
32: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:40:18.83 ID:nmbmsLX+0
地べたに座らされた梓は、ガタガタと震えていた。
それは、恐怖のせいだけではない。
真夏だが、空調の効いた部室は、ただでさえ少し肌寒いくらいなのに、
バケツの水を3回ほど浴びせられて、全身びしょ濡れの梓にとっては、
身を刺す真冬の寒空に、裸で放り出されたのと同じくらいの、寒さを感じさせていた。
椅子に座った唯に、上履きで頭を踏みつけられる。
「あはははー。鼻水たらしちゃって、きったないねー」
梓は「ごめんなさい。ごめんなさい」と繰り返し口にしていた。
「それはさぁ。何に対しての、ごめんなさい、なの?」
4回目の水を、浴びせかけられた。
それは、恐怖のせいだけではない。
真夏だが、空調の効いた部室は、ただでさえ少し肌寒いくらいなのに、
バケツの水を3回ほど浴びせられて、全身びしょ濡れの梓にとっては、
身を刺す真冬の寒空に、裸で放り出されたのと同じくらいの、寒さを感じさせていた。
椅子に座った唯に、上履きで頭を踏みつけられる。
「あはははー。鼻水たらしちゃって、きったないねー」
梓は「ごめんなさい。ごめんなさい」と繰り返し口にしていた。
「それはさぁ。何に対しての、ごめんなさい、なの?」
4回目の水を、浴びせかけられた。
34: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:44:09.31 ID:nmbmsLX+0
体に、力が、入らない。
唯に頭を軽く蹴られると、梓は、そのまま後ろに転倒した。
「起きてよ。梓」バケツの水より、冷たい口調で言われる。
必死に全身に力を込めて、梓は起き上がる。
「あはははー!おもしろーい!起き上がりこぼしみたいだねー!」
笑いながら、今度は、顔を、先程より強く、蹴りつけられた。
その痛みに、うずくまる。
「起きてよー。早くー」
わき腹を、つま先で蹴り上げられる。
息ができない。苦しい。
ゴホゴホと咳き込むと、
鼻血か、口の中でも切れたのか、飛沫に血が混じった。
唯に頭を軽く蹴られると、梓は、そのまま後ろに転倒した。
「起きてよ。梓」バケツの水より、冷たい口調で言われる。
必死に全身に力を込めて、梓は起き上がる。
「あはははー!おもしろーい!起き上がりこぼしみたいだねー!」
笑いながら、今度は、顔を、先程より強く、蹴りつけられた。
その痛みに、うずくまる。
「起きてよー。早くー」
わき腹を、つま先で蹴り上げられる。
息ができない。苦しい。
ゴホゴホと咳き込むと、
鼻血か、口の中でも切れたのか、飛沫に血が混じった。
36: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:47:28.41 ID:nmbmsLX+0
遠くの方で、予鈴が聞こえた。
「あー、もう昼休み終わりかー」
残念そうに唯は言った。
梓はまだ起き上れずに、時折、苦しそうにうめいている。
「じゃあ私は授業行ってくるから」
くるり、と扉の方を向いて歩いていく。
あ、そうそう。と唯は付け加えた。
「今、テスト期間で部活ないから、今日は梓で遊ぶことにするよ」
梓の体が、ビクン、とはねる。
「じゃあ、また放課後ね。もし、いなくなってたら、ひどいよ?」
部室にはしばらく、梓の、嗚咽が響いていた。
「あー、もう昼休み終わりかー」
残念そうに唯は言った。
梓はまだ起き上れずに、時折、苦しそうにうめいている。
「じゃあ私は授業行ってくるから」
くるり、と扉の方を向いて歩いていく。
あ、そうそう。と唯は付け加えた。
「今、テスト期間で部活ないから、今日は梓で遊ぶことにするよ」
梓の体が、ビクン、とはねる。
「じゃあ、また放課後ね。もし、いなくなってたら、ひどいよ?」
部室にはしばらく、梓の、嗚咽が響いていた。
38: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:50:38.34 ID:nmbmsLX+0
「わー、本当にまだいたんだー」
唯は心底驚いたように言った。
「3時間近くも、そんな恰好でいたの?寒くないの?」
梓の顔は完全に色を失っていた。
唇は青紫色に変色している。
「なんか、鼻水たらしてるし、汚いなぁ……」
唯は部室の隅の、掃除箱まで歩いていくとゴソゴソとやりだした。
「あった!これこれ」
唯の手には、モップが握られていた。
唯は心底驚いたように言った。
「3時間近くも、そんな恰好でいたの?寒くないの?」
梓の顔は完全に色を失っていた。
唇は青紫色に変色している。
「なんか、鼻水たらしてるし、汚いなぁ……」
唯は部室の隅の、掃除箱まで歩いていくとゴソゴソとやりだした。
「あった!これこれ」
唯の手には、モップが握られていた。
39: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:55:17.50 ID:nmbmsLX+0
「ほら、梓汚いんだから。きれいきれいしないと、ね。」
元々は、青い色をしていたモップらしい。
でも今は、ほこりや、何かわからないような汚れで、
黒く変色していた。それで、顔を、ゴシゴシとやられる。
「ゆ、い先輩、や、めて、くださ、い」
梓は、必死に抵抗したが、もう体に力は入らない。
「もうちょっとだけ、我慢してね」
ギラギラとした表情で、モップを押し付けてくる。
私の知っている唯先輩は、もうここにはいない。
元々は、青い色をしていたモップらしい。
でも今は、ほこりや、何かわからないような汚れで、
黒く変色していた。それで、顔を、ゴシゴシとやられる。
「ゆ、い先輩、や、めて、くださ、い」
梓は、必死に抵抗したが、もう体に力は入らない。
「もうちょっとだけ、我慢してね」
ギラギラとした表情で、モップを押し付けてくる。
私の知っている唯先輩は、もうここにはいない。
43: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:16:14.31 ID:nmbmsLX+0
もうどれくらい、経ったんだろう。
窓の外は、日が陰り始めていた。
「じゃあ、次はねー」
いつになったら帰れるんだろう。
唯は、もう次のいじめを考え始めている。
梓は、このまま死んでしまうのではないかと、思い始めていた。
そのときだった。
ガチャリ。
部室の扉が音をたてる。
唯と、梓は、はっとして、扉の方を見た。
そこには、澪が立っていた。
窓の外は、日が陰り始めていた。
「じゃあ、次はねー」
いつになったら帰れるんだろう。
唯は、もう次のいじめを考え始めている。
梓は、このまま死んでしまうのではないかと、思い始めていた。
そのときだった。
ガチャリ。
部室の扉が音をたてる。
唯と、梓は、はっとして、扉の方を見た。
そこには、澪が立っていた。
44: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:16:49.10 ID:nmbmsLX+0
「み、澪ちゃ」
「梓!」叫ぶと、澪は梓の元へ駆けていき、抱きかかえた。
「み、澪先輩……」か細い声でつぶやくのが、やっとの様子だった。
梓を抱きかかえながら、唯の方をにらみつける。
「何やってんだよ!お前!」
「み、澪ちゃん。違うんだよ、これは」「何がだ!?何が違う!?」
唯が身をすくめた。
「唯!お前どうしちゃったんだよ!いったい!」澪が詰問する。
「……澪ちゃんが」
「え」
「澪ちゃんが、悪いんだよ」
唯は、観念するように、言った。
「梓!」叫ぶと、澪は梓の元へ駆けていき、抱きかかえた。
「み、澪先輩……」か細い声でつぶやくのが、やっとの様子だった。
梓を抱きかかえながら、唯の方をにらみつける。
「何やってんだよ!お前!」
「み、澪ちゃん。違うんだよ、これは」「何がだ!?何が違う!?」
唯が身をすくめた。
「唯!お前どうしちゃったんだよ!いったい!」澪が詰問する。
「……澪ちゃんが」
「え」
「澪ちゃんが、悪いんだよ」
唯は、観念するように、言った。
45: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:17:21.15 ID:nmbmsLX+0
どういうことだよ、と疑問を投げかけようとしたが、
唯の目を見て、澪は口をつぐんだ。
それは、諦観の色を含んでいたから。
「私は」
唯はゴクリとつばを飲み込んだ。そして、一呼吸おいてから、言った。
「澪ちゃんが、好きなの」
この部室だけ、空間が世界と隔絶されたかのように、時間が止まった。
唯は、いったい、何を言ってるんだ。
「私は、澪ちゃんが、好き」
繰り返し言ったその言葉が、澪に染み込むまで、
永遠に近いほどの時間が必要そうだった。
唯の目を見て、澪は口をつぐんだ。
それは、諦観の色を含んでいたから。
「私は」
唯はゴクリとつばを飲み込んだ。そして、一呼吸おいてから、言った。
「澪ちゃんが、好きなの」
この部室だけ、空間が世界と隔絶されたかのように、時間が止まった。
唯は、いったい、何を言ってるんだ。
「私は、澪ちゃんが、好き」
繰り返し言ったその言葉が、澪に染み込むまで、
永遠に近いほどの時間が必要そうだった。
50: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:38:46.34 ID:nmbmsLX+0
止まった時間を動かしたのは、意外にも腕の中の梓だった。
「そういう、ことですか」
唯がジロリと見る。
「私が、澪先輩と、仲良くしてたのが、気にくわないんですか」
「梓、少し黙って」唯が顔を歪める。
「嫌ですよ。なんで、八つ当たり、されなきゃいけないんですか」
「黙れ」さらに。
「ふざけないで、ください。澪先輩は、私と」
「黙れええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」
唯が、モップを振り上げ、突進してくる。
「梓!危ない!」
唯が、モップを、振り下ろした。
「そういう、ことですか」
唯がジロリと見る。
「私が、澪先輩と、仲良くしてたのが、気にくわないんですか」
「梓、少し黙って」唯が顔を歪める。
「嫌ですよ。なんで、八つ当たり、されなきゃいけないんですか」
「黙れ」さらに。
「ふざけないで、ください。澪先輩は、私と」
「黙れええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」
唯が、モップを振り上げ、突進してくる。
「梓!危ない!」
唯が、モップを、振り下ろした。
51: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:39:19.33 ID:nmbmsLX+0
カランカラン。
折れたモップが、部室の床を転がった。
動き出した時間が、またしばし、停止する。
そして、止まった時間を動かしたのは、また梓であった。
「澪、先輩……?」
梓をかばうように、頭部にモップの直撃を受けた澪は、
頭から血を流し、ぐったりするように、動かなくなっていた。
「み、澪ちゃん。う、嘘だよ。嘘だよ、ね?」
唯は、モップを取り落し、震えながら言う。
「唯先輩、あなた、何してるんですか」
梓の目が、憎悪に燃えた。
折れたモップが、部室の床を転がった。
動き出した時間が、またしばし、停止する。
そして、止まった時間を動かしたのは、また梓であった。
「澪、先輩……?」
梓をかばうように、頭部にモップの直撃を受けた澪は、
頭から血を流し、ぐったりするように、動かなくなっていた。
「み、澪ちゃん。う、嘘だよ。嘘だよ、ね?」
唯は、モップを取り落し、震えながら言う。
「唯先輩、あなた、何してるんですか」
梓の目が、憎悪に燃えた。
52: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:39:52.61 ID:nmbmsLX+0
「あ、ああ、あ」
唯は、目の前の現実が、受け入れられずにいた。
私が、澪ちゃんを、殺した。
そんな、わけ、ないよ。
そんな、わけないよね。澪ちゃん。
今年の夏も、一緒に、海行くんでしょ?
一緒に、文化祭でライブやるんでしょ?
ううん。そんな特別なことじゃなくても。
部室で一緒にケーキ食べて、一緒に紅茶飲んで、一緒に歌って。
だから、目を覚まして。目を覚ましてよ、澪ちゃん。
唯の思考は、完全に停止していた。
そして、完全に思考が停止した唯は、
後ろでモップを構える梓に、全く気付いていなかった。
唯は、目の前の現実が、受け入れられずにいた。
私が、澪ちゃんを、殺した。
そんな、わけ、ないよ。
そんな、わけないよね。澪ちゃん。
今年の夏も、一緒に、海行くんでしょ?
一緒に、文化祭でライブやるんでしょ?
ううん。そんな特別なことじゃなくても。
部室で一緒にケーキ食べて、一緒に紅茶飲んで、一緒に歌って。
だから、目を覚まして。目を覚ましてよ、澪ちゃん。
唯の思考は、完全に停止していた。
そして、完全に思考が停止した唯は、
後ろでモップを構える梓に、全く気付いていなかった。
53: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:40:24.94 ID:nmbmsLX+0
まず、衝撃。
そして、熱。
胸のムカつきに、唯は我に返った。
なんだっけ。どうしたんだっけ。
なんだか、焼けるように、熱い。
自分の胸を見ると、折れたモップが突き刺さっている。
「澪先輩、敵は取りましたよ……」
青ざめた顔の梓が、その先端を握っていた。
そして、熱。
胸のムカつきに、唯は我に返った。
なんだっけ。どうしたんだっけ。
なんだか、焼けるように、熱い。
自分の胸を見ると、折れたモップが突き刺さっている。
「澪先輩、敵は取りましたよ……」
青ざめた顔の梓が、その先端を握っていた。
54: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:40:57.45 ID:nmbmsLX+0
「結局、廃部になっちゃったな」
涙声で律が言う。
「そうね」
同じく涙声で紬。
部室で、他殺者1名、自殺者2名を出した部に、入ろうとする者は皆無だった。
「スティックとりに行ったら、唯が映画のドラキュラみたいな死に方してて、
梓と、澪は首つって死んでんだもんな。驚いたよ」
「律ちゃんは、強いわよね。私だったら、
その現場を見ちゃったら、きっと、立ち直れない」
律は、鼻をすすった。
「いや、あいつらの分も、楽しんで生きないと、な」
後半は、うまく言葉にならなかった。
涙声で律が言う。
「そうね」
同じく涙声で紬。
部室で、他殺者1名、自殺者2名を出した部に、入ろうとする者は皆無だった。
「スティックとりに行ったら、唯が映画のドラキュラみたいな死に方してて、
梓と、澪は首つって死んでんだもんな。驚いたよ」
「律ちゃんは、強いわよね。私だったら、
その現場を見ちゃったら、きっと、立ち直れない」
律は、鼻をすすった。
「いや、あいつらの分も、楽しんで生きないと、な」
後半は、うまく言葉にならなかった。
55: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:41:29.42 ID:nmbmsLX+0
「ごめんなさいね。私も手を尽くして、頑張ったんだけれど……。
やっぱり、縁起が悪いってことで、あの部室は、取り壊されることが、決まっちゃったの」
さわ子先生は、涙をこらえるように、言葉を途切れさせながら言った。
「まぁ、しょうがないですよ、ね」と、律。
「あのオカルト研究部が使うって話が無くなっただけでも、良しとしましょうよ」と、紬。
事件の直後にそういう話があったらしいが、
さわ子先生が激怒して無しになったらしい。
律と紬は、そのことでも感謝していた。
「さーて、明日から、どこでお茶しようかな」
無理に明るく、律が言う。
「そうね、どこがいいかしら」
もう、あの空間は、帰ってこない。
終わり。
やっぱり、縁起が悪いってことで、あの部室は、取り壊されることが、決まっちゃったの」
さわ子先生は、涙をこらえるように、言葉を途切れさせながら言った。
「まぁ、しょうがないですよ、ね」と、律。
「あのオカルト研究部が使うって話が無くなっただけでも、良しとしましょうよ」と、紬。
事件の直後にそういう話があったらしいが、
さわ子先生が激怒して無しになったらしい。
律と紬は、そのことでも感謝していた。
「さーて、明日から、どこでお茶しようかな」
無理に明るく、律が言う。
「そうね、どこがいいかしら」
もう、あの空間は、帰ってこない。
終わり。
56: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:43:05.35 ID:FyLTml2v0
乙
57: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:43:30.70 ID:APdcZLAB0
いいね
62: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:57:14.85 ID:dsG//jcdO
久々にいいけいおんSSだった
1乙
1乙
64: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:59:51.84 ID:psQweeAH0
おもしろかった


コメント
コメント一覧 (8)
おかしいのをおかしいといって何が悪いのか
ガキはネットすんなとか高校生くらいの子かなー?
ガキはネットすんなよ
胸糞悪いし、これに出てくる唯は唯と名乗る資格なし
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