1: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:06:55.36 ID:nmbmsLX+0
dc80d27acb0469b3d88d24a2b630a0c51316e5841374673582
「あー」言いながら律は頭をボリボリと掻いた。

「まぁ、確かに、な」

唯に同調する。

「やっぱりそう思うよね!あの子って、先輩に対する礼儀がなってないと思う」

梓に対する不満で盛り上がる二人に、澪はオロオロと狼狽する。
二人と、紬の方を、交互に見比べていた。
紬は、困ったような笑みを浮かべるだけで、成り行きに任せているように見える。

「澪ちゃんは、どう思う?」

来た。澪は、思った。


4: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:08:31.96 ID:nmbmsLX+0
「えーと……」

どうしよう。何て答えるのが、正解なのだろうか。
唯と律は、じっと、澪の反応を待っている。

「あの、さ」

澪は、ここでいったん、言葉を切った。そして、短く深呼吸して、一気に言う。

「別にいいんじゃないか?そんなに体育会系でもないだろ。うちは」

「澪ちゃん。それ、どういうこと」

唯の表情が、みるみる嫌悪感で歪む。

「えっと」言葉に詰まる。しまった、間違えたか。
助けを求めるように紬の方を見たが、相変わらず困ったような笑みを、浮かべているだけだった。

6: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:09:58.61 ID:nmbmsLX+0
「いや、だからさ」

澪は二の句を継ごうとした。しかし、

「もう、いい」唯はそう言うと、ガサガサと、乱暴に荷物をまとめて出て行ってしまった。

「あ、あ」止めようとした澪だったが、何を言っていいのか分からない。

律が「はぁー」と、大仰にため息をついた。

紬は、困ったような笑みを浮かべていた。

7: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:10:32.98 ID:nmbmsLX+0
梓が部室に到着すると、ちょうど律が出ていくところだった。

「あれ、律先輩。どうしたんですか?」

「帰るんだよ。今日の部活は中止」

それだけ言うと、梓の横をすり抜けて、階段を降りて行った。
どうしたんだろう。また、澪先輩と喧嘩でもしたのだろうか。
しばらくどうするべきか思案していた梓だったが、とりあえず部室に顔を出すことにした。
どういう状況なのか、聞きたい気持ちもあったからだ。

「すいませーん!遅くなりました。って、あれ。唯先輩もいない」

部室には、困ったような顔を浮かべた、澪と紬だけが残されていた。

9: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:11:04.90 ID:nmbmsLX+0
澪は、自室のベットの上で、頭を悩ませていた。
唯には、謝罪のメールはしたけれど。

「はぁー」

わざと、大きな声でため息をついた。
悩み事が、全部ため息に溶けて消えてくれるような気がしたから。

「明日、ちゃんとみんな来てくれるかな……」

ゴロゴロと寝返りを打ちながら、そう考えているうちに、いつの間にか眠っていた。

12: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:14:21.26 ID:nmbmsLX+0
澪は、何回も深呼吸を繰り返し、そして、
おそるおそる、部室の扉を開けた。
唯がいた時の、謝罪の言葉を色々考えていたのに、部室には誰もいなかった。
なんだか、ほっとしてしまう。
頭の中で繰り返しシミュレートはしたけど、いざ唯を目の前にすると、
ちゃんと言えるのか、不安だったからだ。
ふぅ、と息をつき、部室に入ろうとした、そのときだった。

「澪ちゃん!」

後ろから、声をかけられた。ギクリとして固まり、一瞬間ののち、振り返る。

13: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:14:53.38 ID:nmbmsLX+0
「唯……、あのさ」澪は、謝罪の言葉を口にしようとした。

「昨日はごめんね!澪ちゃん!」言い終わる前に、抱きしめられた。

「澪ちゃんは何も悪くないよ!私がわがままなんだよ!」

ぎゅうぎゅうと、体を締め付けてくる。
ああ、良かった。いつもの唯だ。
澪も、抱きしめ返しながら言う。

「私もごめん。唯の気持ちを、考えてやれなかった」

「ううん!いいのいいの!じゃあ今日も楽しく部活やろうね!」

不安材料がひとつ減ったおかげで、体が軽くなる感じがした。

15: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:15:26.21 ID:nmbmsLX+0
唯と律が、ケーキを取り合って、キャーキャーと騒いでいる。
ふと、紬の方を見ると、目があった。
笑顔を浮かべたので、こちらも笑顔で返す。
昨日は、とても不安だったけれど、こうなってみると、その不安も嘘みたいだった。
けいおん部の部室は、やっぱりこうじゃないとな。
澪は、そう思いながら、紅茶に手を伸ばす。そのとき。
扉が、バン!という、大きな音をたてて開いた。

「すいません!遅くなりました!」

澪は見た。唯の顔から、表情が、消えるのを。

16: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:18:37.31 ID:nmbmsLX+0
「すいません、H.R.が長引いて……」

バタバタと駆けてくる梓の前に、唯が立ちふさがった。

「あ、」すいません唯先輩。と、言いかけたが、唯の平手打ちがそれを許さなかった。
バシン!という大きな音が、完全防音の部室に響き渡る。

「あ、え?」梓は一瞬訳が分からないという表情になった。
「な、何するんですか!唯先輩!」

二度目の、バシン!という音が、響き渡った。

17: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:19:08.62 ID:nmbmsLX+0
「梓。最近、調子乗ってるよね」

”梓”
自分のことを呼ばれているのに、違和感を覚えた。
「あずにゃーん!」って、呼んでくれる、いつもの唯先輩はどこに行っちゃったんだろう。

「ねぇ?」黙っている梓にしびれを切らし、唯が返答を促す。

「あの、えっと!はい!」混乱した頭で返答する。

「調子に乗ってるでしょ」無表情のまま繰り返した。

「い、いえ!そんなことはないです!」

唯は、つまらなさそうに「ふーん」とだけ言った。

18: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:20:56.73 ID:nmbmsLX+0
唯と律は、相変わらずふざけあって騒いでいるけど。
さっきまでとは、全然空気が違っていた。
先程から、梓は青ざめた顔で、ずっと俯いている。
紬は、それを心配そうに見つめていた。
澪もどうしていいか分からず、ただ黙っているだけだった。

「あーあ」

唯が突然、大きな声で言った。

「誰かさんのせいで、部室が辛気臭いよー」

梓の体が、ビクリ。と、はねた。

20: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:21:45.89 ID:nmbmsLX+0
「あはははー。自覚はあるみたいだねー」

唯と律が、きゃっきゃと笑っている。
膝の上に手を置いて、しばらく震えながら耐えていた梓だったが、
とうとう堪え切れなくなったのか、荷物を乱暴に引っ掴んで部室を出て行った。
澪には、梓が涙を流しているように見えた。

「あー、これで空気も良くなるねー!」

その後ろ姿に、容赦なく追い打ちをかける。

さすがに、咎めるべきだろうか。
澪は思ったけれど、昨日のことが思い返されて、それができずにいた。
梓には申し訳ないけど、もう、あんな気持ちはコリゴリだ。
澪は、無意識に、唯と梓を天秤にかけていた。

23: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:26:36.17 ID:nmbmsLX+0
いったい、何がどうしてしまったんだろう。
授業も上の空で、梓は自問を繰り返していた。
調子に乗っていたつもりはない。けれど。

少し、失礼な態度を、取りすぎたのかな。

考えていると、また涙があふれてきそうになる。
ちょっと前まではとても楽しい空間だったのに。
今では、あの部室に行くのが、怖い。

今日も、放課後は、まっすぐ家に帰ることにしよう。
それだけ決めると、少し心が軽くなった。

24: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:27:09.69 ID:nmbmsLX+0
梓が来なくなって2週間が経とうとしていた。
唯と律は、相変わらず、今年の夏は海に行こうかー、なんて盛り上がっている。
このまま夏休みに入ってしまうと、梓と仲直りするきっかけが、
永久に失われてしまうのではないかと、とても不安になる。

「ちょっと、二人とも、いいかな」
澪は意を決した。

「なぁに?澪ちゃん」唯は、笑顔のまま向き直る。
「なんだよ?澪」律は少し、怪訝な表情を浮かべた。

「あの、梓のことなんだけど」

27: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:30:08.06 ID:nmbmsLX+0
スッ、と唯の表情が消える。
それだけで、澪は気勢をそがれた。
また、唯に帰られでもしたら、困る。

「あはは、ごめん。なんでも、ないよ」

取り繕うように、澪が言うと、
色のない声で「そっかー」と唯は返した。

「こ、今年、私も海に行きたいな。また、ムギの別荘でさ」
ちらりと、紬の方を見ると、困ったような表情を浮かべていた。

「あー!いいねいいね!じゃあ決まりね!いつにするー?」

笑顔の唯に戻った。
ごめん、梓。私には、無理そうだ。

おそらく、ここに梓は戻ってこれないんだろうなと、澪は考えていた。

28: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:30:39.94 ID:nmbmsLX+0
昼休みに、廊下を歩いていた梓は、ギクリ、と立ち止った。
廊下の向こうから、唯先輩が、歩いてくるのが、見える。

「あ、ああ……」

恐怖に体がすくんだ。
幸い、向こうはまだ自分に気づいていない。
早く、この場を、離れないと。

そう思う気持ちとは裏腹に、体は全く言うことを聞いてくれなかった。
唯先輩が、どんどん、近づいて、来る。

「あ」目が、合った。

「梓じゃん」

唯が口元を歪めた。

31: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:36:23.45 ID:nmbmsLX+0
「ど、どうも、お疲れ様です」

梓は、これだけ言うのも精いっぱいだった。

「ん?」唯が、顔を、近づけてくる。
「ヒッ」と、短い悲鳴を上げて、梓は後ずさった。

唯が不快そうに顔を歪める。
どうやら、気分を害したようだ。

「まぁ、立ち話もなんだからさ。部室においでよ」

梓は、気を失いそうになりながらも、唯についていくことしかできなかった。

32: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:40:18.83 ID:nmbmsLX+0
地べたに座らされた梓は、ガタガタと震えていた。
それは、恐怖のせいだけではない。

真夏だが、空調の効いた部室は、ただでさえ少し肌寒いくらいなのに、
バケツの水を3回ほど浴びせられて、全身びしょ濡れの梓にとっては、
身を刺す真冬の寒空に、裸で放り出されたのと同じくらいの、寒さを感じさせていた。

椅子に座った唯に、上履きで頭を踏みつけられる。

「あはははー。鼻水たらしちゃって、きったないねー」

梓は「ごめんなさい。ごめんなさい」と繰り返し口にしていた。

「それはさぁ。何に対しての、ごめんなさい、なの?」

4回目の水を、浴びせかけられた。

34: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:44:09.31 ID:nmbmsLX+0
体に、力が、入らない。
唯に頭を軽く蹴られると、梓は、そのまま後ろに転倒した。

「起きてよ。梓」バケツの水より、冷たい口調で言われる。

必死に全身に力を込めて、梓は起き上がる。

「あはははー!おもしろーい!起き上がりこぼしみたいだねー!」

笑いながら、今度は、顔を、先程より強く、蹴りつけられた。
その痛みに、うずくまる。

「起きてよー。早くー」

わき腹を、つま先で蹴り上げられる。
息ができない。苦しい。
ゴホゴホと咳き込むと、
鼻血か、口の中でも切れたのか、飛沫に血が混じった。

36: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:47:28.41 ID:nmbmsLX+0
遠くの方で、予鈴が聞こえた。

「あー、もう昼休み終わりかー」

残念そうに唯は言った。
梓はまだ起き上れずに、時折、苦しそうにうめいている。

「じゃあ私は授業行ってくるから」

くるり、と扉の方を向いて歩いていく。
あ、そうそう。と唯は付け加えた。

「今、テスト期間で部活ないから、今日は梓で遊ぶことにするよ」

梓の体が、ビクン、とはねる。

「じゃあ、また放課後ね。もし、いなくなってたら、ひどいよ?」

部室にはしばらく、梓の、嗚咽が響いていた。

38: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:50:38.34 ID:nmbmsLX+0
「わー、本当にまだいたんだー」

唯は心底驚いたように言った。

「3時間近くも、そんな恰好でいたの?寒くないの?」

梓の顔は完全に色を失っていた。
唇は青紫色に変色している。

「なんか、鼻水たらしてるし、汚いなぁ……」

唯は部室の隅の、掃除箱まで歩いていくとゴソゴソとやりだした。

「あった!これこれ」

唯の手には、モップが握られていた。

39: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 14:55:17.50 ID:nmbmsLX+0
「ほら、梓汚いんだから。きれいきれいしないと、ね。」

元々は、青い色をしていたモップらしい。
でも今は、ほこりや、何かわからないような汚れで、
黒く変色していた。それで、顔を、ゴシゴシとやられる。

「ゆ、い先輩、や、めて、くださ、い」

梓は、必死に抵抗したが、もう体に力は入らない。

「もうちょっとだけ、我慢してね」

ギラギラとした表情で、モップを押し付けてくる。
私の知っている唯先輩は、もうここにはいない。

43: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:16:14.31 ID:nmbmsLX+0
もうどれくらい、経ったんだろう。
窓の外は、日が陰り始めていた。

「じゃあ、次はねー」

いつになったら帰れるんだろう。
唯は、もう次のいじめを考え始めている。
梓は、このまま死んでしまうのではないかと、思い始めていた。

そのときだった。

ガチャリ。

部室の扉が音をたてる。

唯と、梓は、はっとして、扉の方を見た。

そこには、澪が立っていた。

44: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:16:49.10 ID:nmbmsLX+0
「み、澪ちゃ」
「梓!」叫ぶと、澪は梓の元へ駆けていき、抱きかかえた。

「み、澪先輩……」か細い声でつぶやくのが、やっとの様子だった。

梓を抱きかかえながら、唯の方をにらみつける。

「何やってんだよ!お前!」

「み、澪ちゃん。違うんだよ、これは」「何がだ!?何が違う!?」

唯が身をすくめた。

「唯!お前どうしちゃったんだよ!いったい!」澪が詰問する。

「……澪ちゃんが」

「え」

「澪ちゃんが、悪いんだよ」

唯は、観念するように、言った。

45: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:17:21.15 ID:nmbmsLX+0
どういうことだよ、と疑問を投げかけようとしたが、
唯の目を見て、澪は口をつぐんだ。
それは、諦観の色を含んでいたから。

「私は」

唯はゴクリとつばを飲み込んだ。そして、一呼吸おいてから、言った。

「澪ちゃんが、好きなの」

この部室だけ、空間が世界と隔絶されたかのように、時間が止まった。
唯は、いったい、何を言ってるんだ。

「私は、澪ちゃんが、好き」

繰り返し言ったその言葉が、澪に染み込むまで、
永遠に近いほどの時間が必要そうだった。

50: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:38:46.34 ID:nmbmsLX+0
止まった時間を動かしたのは、意外にも腕の中の梓だった。

「そういう、ことですか」

唯がジロリと見る。

「私が、澪先輩と、仲良くしてたのが、気にくわないんですか」

「梓、少し黙って」唯が顔を歪める。

「嫌ですよ。なんで、八つ当たり、されなきゃいけないんですか」

「黙れ」さらに。

「ふざけないで、ください。澪先輩は、私と」

「黙れええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」

唯が、モップを振り上げ、突進してくる。

「梓!危ない!」

唯が、モップを、振り下ろした。

51: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:39:19.33 ID:nmbmsLX+0
カランカラン。
折れたモップが、部室の床を転がった。
動き出した時間が、またしばし、停止する。

そして、止まった時間を動かしたのは、また梓であった。

「澪、先輩……?」

梓をかばうように、頭部にモップの直撃を受けた澪は、
頭から血を流し、ぐったりするように、動かなくなっていた。

「み、澪ちゃん。う、嘘だよ。嘘だよ、ね?」

唯は、モップを取り落し、震えながら言う。

「唯先輩、あなた、何してるんですか」

梓の目が、憎悪に燃えた。

52: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:39:52.61 ID:nmbmsLX+0
「あ、ああ、あ」

唯は、目の前の現実が、受け入れられずにいた。

私が、澪ちゃんを、殺した。

そんな、わけ、ないよ。

そんな、わけないよね。澪ちゃん。

今年の夏も、一緒に、海行くんでしょ?

一緒に、文化祭でライブやるんでしょ?

ううん。そんな特別なことじゃなくても。

部室で一緒にケーキ食べて、一緒に紅茶飲んで、一緒に歌って。

だから、目を覚まして。目を覚ましてよ、澪ちゃん。

唯の思考は、完全に停止していた。
そして、完全に思考が停止した唯は、
後ろでモップを構える梓に、全く気付いていなかった。

53: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:40:24.94 ID:nmbmsLX+0
まず、衝撃。
そして、熱。

胸のムカつきに、唯は我に返った。
なんだっけ。どうしたんだっけ。
なんだか、焼けるように、熱い。

自分の胸を見ると、折れたモップが突き刺さっている。

「澪先輩、敵は取りましたよ……」

青ざめた顔の梓が、その先端を握っていた。

54: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:40:57.45 ID:nmbmsLX+0
「結局、廃部になっちゃったな」

涙声で律が言う。

「そうね」

同じく涙声で紬。

部室で、他殺者1名、自殺者2名を出した部に、入ろうとする者は皆無だった。

「スティックとりに行ったら、唯が映画のドラキュラみたいな死に方してて、
梓と、澪は首つって死んでんだもんな。驚いたよ」

「律ちゃんは、強いわよね。私だったら、
その現場を見ちゃったら、きっと、立ち直れない」

律は、鼻をすすった。

「いや、あいつらの分も、楽しんで生きないと、な」

後半は、うまく言葉にならなかった。

55: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:41:29.42 ID:nmbmsLX+0
「ごめんなさいね。私も手を尽くして、頑張ったんだけれど……。
やっぱり、縁起が悪いってことで、あの部室は、取り壊されることが、決まっちゃったの」

さわ子先生は、涙をこらえるように、言葉を途切れさせながら言った。

「まぁ、しょうがないですよ、ね」と、律。

「あのオカルト研究部が使うって話が無くなっただけでも、良しとしましょうよ」と、紬。

事件の直後にそういう話があったらしいが、
さわ子先生が激怒して無しになったらしい。
律と紬は、そのことでも感謝していた。

「さーて、明日から、どこでお茶しようかな」

無理に明るく、律が言う。

「そうね、どこがいいかしら」

もう、あの空間は、帰ってこない。

終わり。

56: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:43:05.35 ID:FyLTml2v0

57: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:43:30.70 ID:APdcZLAB0
いいね

62: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:57:14.85 ID:dsG//jcdO
久々にいいけいおんSSだった
1乙

64: 名無しさん 投稿日:2014/04/30(水) 15:59:51.84 ID:psQweeAH0
おもしろかった